飛び込め!リゾートバイト!

リゾートバイト。それは誰もが憧れ、でもどこか踏み出せない知る人ぞ知るバイト。そんなリゾートバイトにスキル無し!コミュ力普通!意欲MAX!で飛び込んだ平凡フリーターの体験記。

リゾートバイト体験記2日目

6:00起床

 さすが、8時に寝ただけあって満足のいく睡眠だった。少し寝すぎたくらいだが、疲れていたし仕方がない。目下の不安であったスーツも使えなくはないくらいに乾いていた。簡単な朝食を済ませ、初仕事となる今日をシミュレートする。朝が早いと余裕があるから良い。

 

 まず挨拶。まぁ問題ないだろう。人並の礼儀作法は身に着けてきたつもりだ。これから一緒に働く同僚たちと、どんな会話をすればいいかまでは考えが及ばなかったが、なんら問題はない。徐々に慣れればいいのだから。それよりも業務内容だ。フリーターゆえ、多くの業種に接してきたがフロントは初めてだ。自分が宿泊したときに受けたサービスは覚えているから想像しやすいが、まさかそれだけとは限らない。ホテル独特の言葉遣いや、慣習があるだろう。ある程度の当たりをつけて、今度は簡単な英語を調べた。こういった観光地のホテルの宿泊客は、時期によって外国人客が圧倒的に多い。英語が使えないというのはそれだけで仕事に支障がでる。そう考えての行動だった。

 

 一通りの英語を調べた頃には時刻は7時を過ぎていた。始業は8時からだ。そろそろ行こう。寮の部屋を出て、そのままホテルへと向かう。

 

 

 

あれ、思ったより簡単だな…?

 フロントに着くと昨日カウンターで対応してくれた背の低い女性と、中年くらいの男性がいた。すかさず挨拶をする。背の低い女性はKさん。彼女もSさんと同じ頃に赴任した派遣で、私の先輩にあたる。中年の男性は社員のWさんで、なんだか穏やかそうな雰囲気をまとっていた。さっそく優しそうな方とわかって少し浮かれた。カウンターで挨拶を済ませた後、バックルームで若い男性に会う。こちらはだいぶ若い。私と同じくらいではないだろうか。少しおとなしそうな印象の彼はBと名乗り、こちらも紹介を返す。どうやら彼も社員らしい。一通り挨拶を終え、まだ客足もないフロアは彼女たちの世間話でかろうじてにぎやかさを保っている。私は内気さからか、話に入れずに少し居心地の悪い時間を過ごしていた。

 

 しばらくして管理職、フロント課の課長が到着。前日に顔は見かけているものの改めて挨拶をする。どうやら午前中は課長が仕事を教えてくれるようだ。最初の業務は館内設備の把握。お客様に案内する上で、適切な理解がなければいけないからだそうだ。午前の業務時間すべてを使って広い館内を課長と、次に一人で回る。拍子抜けするくらい業務は簡単だったが、まだ初日。これを業務と呼んではいけないのだろう。だが、自信は持てた。

 

 

 

昼休憩

 ホテルのフロントはほとんどの場合、昼の休憩が長い。ホテルの昼というのは、お客さんがいない空白の時間だからだ。今日の私の勤務は、特に昼休憩の長い勤務だった。時間にして3時間近く休憩時間がある。私は寮で過ごすことよりも、少しでも街に出て付近を散策しようと思った。出入りする船はまだ慣れず、2回目の乗船。やはり乗っていいのかわからず船頭に声をかける。昨日よりも若い船頭だ。彼は一瞬驚いたようにこちらを見たが、すぐににこやかに笑ってええでという。くしゃっと子供みたいに笑う太陽みたいな人だった。私はお礼を告げ、そのまま街へと繰り出す。

 

 

 

午後の業務

 午後の業務は14時からで、街から戻るころにはちょうどいい時間になっていた。そのまま少し早くフロントへ向かい、業務の説明を受ける。これからの時間は朝のチェックアウトとは違い、チェックインの時間。宿泊する部屋まで案内したり、チェックイン業務など、業務は多くなる。私は研修ということで、ほかのスタッフの案内についていくことになった。午前中に館内を回ったことでだいたいのことは理解できた。2、3回案内にいったところで新しいスタッフがいることに気づく。遅出勤務の方々のようだ。Oさん、Lさん、Nさん。皆女性で、OさんLさんは社員、Nさんはフロント課ではないが、午後の案内専門で応援に来ているスタッフらしい。午前と変わらぬつまらぬ挨拶をし、引き続き業務に励む。

 

 

 

お風呂に入ってこれからを考える

 業務は19時頃に終えた。結局独り立ちせぬまま、研修の一日だった。まぁ当たり前なのだが。少しはやる気持ちもあった。そのまま食事をとり、風呂に入る。2日ほどは勤務だが、その次の日は休日だ。ここにきて初めての休日。まだ2日勤務があるとはいえ、心が躍らないわけがなかった。何をしようか、どこに行こうかをわくわくしながら考え、その日は床に就く。